相談事例
ご相談① 父親65歳(相談対象:30歳 息子さん)
30歳の息子が5年間ほどひきこもっています。
大学へ進学して、もともと何事にも真面目に取り組む性格だったので成績も優秀でした。卒業後は就職し、会社員として4年間働いていましたが、残業が多く体調を崩すことが多くなってしまい退職しました。それから新しい仕事を探している様子がなく、何度も仕事のことで話し合いをしようとしましたが不機嫌になり口論になってしまいます。このまま社会に出ることが出来なくなるのではないかと思い相談しました。
支援の方針
訪問での支援の検討から入り、父親から息子さんに訪問の許可を取ってもらった上で、訪問支援を始めて行きます。
初回の訪問では、息子さんのお役に立ちそうな情報や、かみつばきでできることを伝えます。会っていただけない場合も多いので、まずは会えることを目標に、継続的に訪問を重ねていくことが重要だと考えています。
面会ができるようになったら、現状での息子さん自身の強みに視点を置き、可視化します。息子さん自身が自分の強みを自覚することで、次のステップへの意欲を持っていただけることを目指します。例えば、家族外との交流や、社会活動に興味を感じられたなら、町内での活動情報など、ご本人ができそうな情報を提供し、活動参加に向けた支援もします。
また、社会活動から次のステップとして就労を希望された場合には、スタッフが同行してハローワークに行くなどの支援もできます。就労後にも相談の継続は可能です。社会参加後に気持ちが揺れたり、新たに悩みが発生することもありますので、その際にも気軽にご相談をしていただく関係性を構築することで、就労の定着を目指します。
ご相談② 母親59歳(相談対象:34歳 娘さん)
同居している娘の金銭問題で悩んでいます。娘は一応アルバイトをしてはいるのですが、お給料のほとんどをつきあっている彼氏につぎ込んでいるようなのです。いい人だと本人は言っているのですが、母親から見ているとどうも怪しいというか。近頃、娘のもとにカードローンの会社から郵便物が来ていることがあり、顔色が曇っていたので、これは何なのと問い詰めても何でもないと話してくれません。なにか悪いことに巻き込まれているようで心配でたまらず相談に来ました。
支援の方針
まずは相談者である母親から、娘の状況を確認します。母親の話から、娘さんにこだわりなどの発達の特性が見られ、早期解決を目指した方が良い問題も見られることから、娘さん自身からの相談を促すよう母親に伝えることにします。その際、娘さん自身が抱えている問題の解決のお手伝いができること、支援する人たち全員で話し合う重層的支援会議の制度があるなど、かみつばきでできることの情報を提供します。
娘さんから相談を受けた後は、娘さん自身の気持ちや決断を考慮しながら、早期解決をした方が良いものから着手するなど問題や優先順位を整理し、娘さんに伴走をしていく形でひとつずつ問題を解決していくお手伝いをします。
【優先順位】
- 金銭問題:法テラスなどの専門機関と連携しての解決を目指す
- 発達の特性:医療機関と連携をし、生きにくさの減少を目指す
- 彼氏との問題:娘さん自身の意思を確認しながら、自分を大切にする関係性についてカウンセリングを行う。場合によっては女性センター等関係機関と連携する
など、それぞれの問題に対し、本人に寄り添い、各機関とも連携をしながら、取り組みます。
そして、娘さん自身の生活を整えることで、ご相談に来られた母親自身の困り感が減ることを目指して支援をしていきます。
ご相談③ 本人45歳(女性)
自分の体調のことと、職場のことで悩んでいます。〇〇〇の会社で事務の仕事をしていますが、最近仕事に行くのが辛くて特に日曜日の夜がとても苦しくなります。あまりぐっすり眠れなくて、常に疲れが溜まっている感じもあって、誰かとケンカをしている夢とか追いかけられる夢とか、目覚めの悪い夢を見ます。最近は、食欲や楽しみを感じることが少なくなってきて、時々、何のために生きているんだろうとか、自分には全く価値がないように思ったりします。話を聞いてもらえたら、何か少し気持ちが変わるかなと思って電話しました。
支援の方針
お電話でのご相談の場合、継続的な相談で内容を整理する必要がある場合は、対面での相談を勧めます。お話の内容では、ご本人に仕事のストレスが原因との自覚はあるようです。また、自覚症状として、睡眠が浅い、食欲不振、意欲の低下、倦怠感、抑うつ症状などがみられたため、本人の意思を確認し、医療機関につなぎます。
カウンセリングを並行しながら、薬物療法等で症状が落ち着いてきたら、今後の見通しを立てます。面談を続けながら、「しばらく休職する」「転職を検討する」など選択肢を提示し、ご本人の体調と希望を考慮しながら、今後の選択するお手伝いをします。また、ご本人の考え方の癖によって再び不調を抱え込まなくて良いように、認知や行動の癖を見直すカウンセリングも重ねていく方向で支援を行います。
ご相談④ 近所の方について。
最近、隣の方の姿をお見かけしないので気になっています。隣人は80代男性で、2年前に妻が亡くなられて、今は一人暮らしです。子どもたちは遠方で暮らされていると聞いています。まめな人で、いつも庭木の手入れもきれいにされていたのに、ここ一週間ほど手入れされた様子もなく、草が伸びてきていて。雨戸もずっと閉まっているし、何かあったのではないかと気になっています。でも、用もなく訪ねるほど親しくはないので、どうしたものかと思い相談しました。
支援の方針
ご相談の内容から、緊急性があるかの確認が必要と感じました。それで、事情を知る人の候補として、区長さんや民生委員さんに安否の確認をされる方法を提案します。これらの方々は、子どもさんの連絡先を知っている場合もあるため、必要であれば、子どもさんに連絡を取ってもらうのもひとつの方法と思われます。
ご年齢のことを考えると、介護が必要となり施設入所をされた、子どもさんの家に引っ越された、などの回答がある場合も多いと思われます。だれも事情を知らない場合は、体調不良などの緊急性が高い可能性もあるため、警察に自宅訪問してもらう方法もあります。
かみつばきでは、こうしたご提案をしながら、一緒にどうするかを考え、解決に向けてのお手伝いをしていきます。
ご相談⑤ 本人43歳(女性) ダブルケア・介護と育児の問題
50歳の夫と2人の子どもと暮らしています。結婚、出産が遅くて、子どもは今、上が3歳、下が1歳です。義父母は80代なのですが、最近、義父が認知症のようになってきたので、私たちが交代で、車で片道30分の義父母の家まで世話に行っています。私も夫も正社員で仕事をしているので、子どもの世話と義父の介護で寝る暇もない状態で、もう、私が仕事を辞めるしかないかと悩んでいます。
ただ、二人合わせて暮らせるくらいの収入だったので、収入が半減するのも不安です。義母も足腰が弱っていて要支援1だし、夫は一人息子で他に頼れるきょうだいもないし、この状態がいつまで続くのかと先を考えると憂うつです。
支援の方針
相談者が希望する生活パターンを確認し、それに近づけることを目標とします。
希望する生活パターンのために資源として使えるもの(育児支援制度・介護支援制度など)の情報を提供し、相談者にとって使いやすいものをピックアップしていきます。またそれぞれの資源を活用できるよう、関係機関につなぐなどの支援をします。
資源を活用していきながら、更なる不足などはないか見直すなど、相談者が安心できるまで伴走支援をします。